アセルス編
仕立て屋の主人
「ジーナ」ジーナ
「は〜い」主人
「今日は終わりにしよ〜」ジーナ
「は〜い、御疲れ様でした。」
私はジーナ。
この仕立屋の親方のもとでお針子として奉公を始めて三年目になります最初はこの陰うつな感じの
「根っこの町」が嫌で堪らなかったのですが、
もう慣れました。私たちの頭を押さえ付けるように
町の上に聳え立つ「針の城」の事も
気にならなくなりました。何の楽しみもない町でこの屋根裏だけが、
私の気を紛らわしてくれる場所です。ここには大切な衣装がしまわれています。
お城からの注文で、あるお方のために、
毎年新しい服を仕立てているのです。
もう十数着にもなります。先輩達は”お城の若様の衣装だ”と噂していました。
その若様はもう何年も眠り続けているのだと言います。
私の胸の中にも、まだ見ぬ方への想いがふくらんでいました。
明日にでも御目覚めになればよいのにと。私は知らなかったのです、その方がどんな運命を背負っているのかを・・・・
アセルス
「・・・・ハア・・・・ハア
・・・・夢か・・・・やな夢だったな
ここ、どこ? 服が破れて・・・・
これ血の痕? どっかケガしたのかな?
じゃあ、ここは病院?」イルドゥン
「お目覚めのようだな やはり人間、目覚めが早い。」アセルス
「誰? ここはどこ? 一体何があったの!?」イルドゥン
「質問に答えよとは仰せ付かっておらん。
私の役目はお前の目覚めをお知らせすることだけ。」アセルス
「知らせるって、おばさんに?」イルドゥン
「何が起きたか、まったく分かっておらん様だな。
ここはファシナトゥール。 我らが主(あるじ)、魅惑の君 オルロワージュ様の世界だ。」アセルス
「待って、オルロワって何者・・・・消えた・・・・
落ちつかなきゃ。
そう、おばさんに言われて小此木さん家まで届け物をして、帰り道で・・・・
そう、私、はねられたんだ! いきなり馬車が現れて・・・
馬車? なんで今どき馬車なんかが・・・・
ああーダメだわ。 夢とごっちゃになってる。 私どうしちゃったんだろう。
とにかく、ここがどこか確かめなきゃ。 まだ夢見てたりしてね!
アセルス
「何これ?
人が・・・・入ってる!
これ・・・・全部・・・・
(宝物庫のアイテムを取ろうとして)
アセルス
「体が・・・・重い・・・・」
(一人で針の城上層部にいこうとして)
アセルス
「化け物だ!!」
(扉を開けようとして)
アセルス
「開かない!!」
アセルス
「何だろう、これ?」
アセルス
「ここの人は本当に薔薇が好きなんだな・・・・」
アセルス
「こちら側からは開かないな。」
アセルス
「こんな所にも花がある。 ここの城主も意外といい趣味かな。
う・・・・オルロワ
「血は紫か」アセルス
「・・・・生きてる・・・・
・・・・傷が・・・・無い!
夢なら覚めて、おねがい!!」
オルロワ
「名は?」アセルス
「私はアセルス。
でもね、人に尋ねる前に自分で名乗るのが礼儀だと思うな」セアト
「この無礼者!」オルロワ
「アセルスか。
人間にしては気の利いた名だな。 気も強い。 いいことだ。」アセルス
「そろそろ名乗ったらどう?」ラスタバン
「魅惑の君」侍女1
「無慈悲な王」セアト
「薔薇の守護者」侍女2
「闇の支配者」イルドゥン
「美しき方」侍女3
「裁きの主」セアト
「ファシナトゥールの支配者
この針の城の主」侍女4
「妖魔の君 オルロワージュ様」アセルス
「妖魔! 妖魔だったのね。
私は人間、あなた達には関係無いわ 家に帰して。」オルロワ
「先ほど花壇で見なかったのか?
お前の血は紫だった。 お前はもう人間ではない。」アセルス
「ウソ」オルロワ
「セアトの剣で串刺しにされた、その傷はなぜ無い?
そもそも、我が馬車に轢かれてお前は死んでいた。
お前が甦ったのは我が青い血の力
妖魔の青と人の赤、二つの血が混じりあいお前の血になったのだ。
紫の血の半妖半人だ。」アセルス
「わたしが・・・・」オルロワ
「かりそめにも我が血を受けし者、それなりの物事を身に付けてもらわねば。
イルドゥン。」イルドゥン
「はっ。」オルロワ
「イルドゥン。 この娘のこと、お前に任すぞ」イルドゥン
「はっ。」セアト
「イルドゥンでは役不足では?
何かの時に醜態をさらすことにも。」ラスタバン
「イルドゥンの身のこなしの素早さ、剣さばき、どちらも十分だ。
セアトよ、お前ごときが口を出すことではない。」アセルス
「半妖・・・・」オルロワ
「ラスタバンの言うとおり、妖魔の力を教えるのはイルドゥン一人で十分だ。
だが、立ち居振る舞いを身に付けさせるために我が姫の一人も付けるとしよう。
白薔薇を目覚めさせておこう。
二人で立派に教育しろ。
まずはその汚らしい格好を何とかしろ。」(イルドゥン以外立ち去る)
アセルス
「妖魔・・・・半妖・・・・青い血・・・・紫の血・・・・」イルドゥン
「いい加減現実を受け入れろ、半人。
半分だけでも妖魔の仲間入りが出来たのだ、ありがたく思え。 行くぞ。」アセルス
「どこへ?」イルドゥン
「血のめぐりの悪い娘だな。 主上のお言葉を聞かなかったのか?
根の街の仕立屋へ行く。 お前の服が仕立ててある。」
ジーナ
「いらっしゃいませ・・・・」
これが私とアセルス様の出会いでした。
その血で汚れた姿に恐怖さえ感じたのを覚えています。
主人
「い、いらっしゃいませ。
高貴なるお方にご来店いただき、光栄でございます。」イルドゥン
「お前に命じておいた衣装を出せ。主人
「はっ、御持ち帰りになられるのですね?」イルドゥン
「これに着せろ。」主人
「はあ?」イルドゥン
「早くしろ。」主人
「は、はい。 ジーナ。」ジーナ
「こちらへ。」
イルドゥン
「一応、格好はついたな。 帰るぞ。」主人
「ありがとうございました。」ジーナ
「あの方、女性だったんだ・・・・」主人
「若君じゃ無かったな。
だが、どっちにしろ妖魔だ!」
屋根裏の憧れの君が女の人だと知って私は動揺していました。
それでも、アセルス様の凛凛しい御姿は、私の胸に深く焼き付いたのです。
ゾズマ
「お前が魅惑の君の血を与えられたという人間か」アセルス
「あなた誰? 人をじろじろ見るなんて失礼でしょう。」ゾズマ
「ふーん、なかなか気が強いんだな。 これなら面白くなりそうだ。
おっと、誰か来る。 これで失礼。」家来1
「おい、今、ゾズマがここにいたな!」家来2
「この城に入りこむとは許せん奴だ。」家来1
「まだその辺りにいるかも知れんぞ。」アセルス
「あいつ、ゾズマっていうのか。」
ゾズマ
「よう!」アセルス
「あなた、確かゾズマね。」ゾズマ
「おや? 自己紹介を済ませたつもりは無いのにな?
じゃあ、改めて。
僕はゾズマ。 君はアセルス?だったよね。」アセルス
「こっちも自己紹介した覚えは無いしする気もないわ。
勝手に入ってきてどういうつもり」ゾズマ
「口のききかたに気をつけないと恨みを買うよ。
妖魔ってのはくだらないプライドを持っているからね。」アセルス
「そういうあなたはどうなの?」ゾズマ
「僕はこの城の連中から嫌われてるよ。 上級妖魔らしくないそうだ。
城にも近づくなって言われてるよ。」アセルス
「その割には簡単に城に入りこめるのね。」ゾズマ
「この城で僕を止められるのは妖魔の君であるオルロワージュ様だけさ。
あとの連中は僕より格下だからね。」アセルス
「結構プライド高いのね。」ゾズマ
「事実さ。 おしゃべりにも飽きた。
それじゃまたね。」アセルス
「あいつ、何しに来たんだ?」
白薔薇
「アセルス様、ご機嫌麗しゅう。」アセルス
「あ、あなたは?」イルドゥン
「主上の第46番目の寵姫、白薔薇姫であられる。
白薔薇様、御久しぶりです。」白薔薇
「イルドゥン、久しぶりですね。
変わりなく何よりです。」イルドゥン
「白薔薇様は歴代の寵姫の中でも、その優しさは第一であった。
お前の教育係りなどにはもったいないお方だ。」アセルス
「ちょうき(寵姫)って、どういうこと?」白薔薇
「これから順々に御教えします。
妖魔のこと、私のこと、オルロワージュ様のこと。
参りましょう。」
アセルス
「この棺、もしかして全部‥‥」白薔薇
「この棺は私たちの安らぎの場所であり、また、牢獄でもあります。
あの方は、一度手に入れたものを決して手放そうとはしないのです」アセルス
「ただの子供じゃないか。」
自室へ帰還
白薔薇
「今日はもうお休み下さい。」イルドゥン
「練習場で待っている。」
白薔薇
「では、参りましょう。」アセルス
「ちょっと待って。あなたとあの人はどんな関係?寵姫って何?」白薔薇
「人間の言葉で言えば愛人でしょうか。」アセルス
「 愛人!!」白薔薇
「もちろん人間同士の関係とは違います。 オルロワージュ様は私の血を奪い、妖魔化し、永遠の命を与え、人間の生活を終えさせたのです。あの方には何人も逆らえない魅力があるのです。」アセルス
「私はそんなもの、これっぽっちも感じない」白薔薇
「それは、アセルス様があの方の血を受けたからです。それどころか、あなたはオルロワージュ様の力をも受け継いでいるはずです。」アセルス
「そんな‥‥ 力なんていらない‥‥」白薔薇
「力を引きだすも眠らせておくも、アセルス様の心一つです。さあ、お話はこれ位に致しましょう。」
イルドゥン
「逃げずに来たのは誉めてやろう。」イルドゥン
「では、訓練を開始する。」イルドゥン
「次!!」イルドゥン
「そこまで!」イルドゥン
「訓練は終わりだ。」
イルドゥン
「実戦はまだ早い!」
白薔薇
「ここが獅子姫様の御部屋です。」白薔薇
「獅子姫様は私の二つ上の姉姫様。黄金の髪から金獅子様とも呼ばれています。
激しい、真直ぐな御気性だと聞いております。」イルドゥン
「獅子姫様は人間であった頃も優秀な戦士だったらしい。
寵姫に成られてからは、その強さは我々さえも越えるほどに成られた。」
白薔薇
「ここが零姫様の御部屋です。」白薔薇
「零姫様はオルロワージュ様の最初の姫です。そして、唯一人、この城とあの方から逃げおおせた方。」イルドゥンがいる場合
イルドゥン
「白薔薇姫様、零姫様のことは‥‥」白薔薇
「ごめんなさい、イルドゥン。」イルドゥン
「一つ教えてやろう。主上の馬車がお前を轢き殺したときも、主上は零姫様を追っていたのだ。」
イルドゥンがいない場合
アセルス
「どうやって逃げたの?」白薔薇
「自ら命を絶ち、転生の法を使って、あの方のくびきを断ち切ったのです。」アセルス
「転生‥‥ 生まれ変わるなんて出来ない‥‥」
ゴサルス
「お前がオルロワージュ様の血を受けただと! 何故だ?
私にはこれほどの才能と技術があるのに認めては下さらぬ。城に住むことも許してもらえん!
お前ごとき、人間の小娘が、魅惑の君の寵愛を受けるとは許せん!!」白薔薇
「違うのです、ゴサルス。」ゴサルス
「これは白薔薇姫さま、御久しゅう御座います。」白薔薇はゴサルスに説明した。
ゴサルス
「そうでしたか。事故ですか。こんな冴えない小娘に何故、御構いになるのか、これで納得がいきました。」アセルス
「冴えなくて、悪かったわね!」ゴサルス
「そんな態度では、光るものも光らなくなるぞ。小娘、これを身に付けておけ。少しは格好がつくというものだ。」白薔薇
「ゴサルスの細工の腕は超一流です。その上、その作品には強い妖力もこもっているのです。」
ラスタバン
「アセルス様、この城にはもう慣れましたか?」アセルス
「こんな所、慣れるわけ無いでしょう!」ラスタバン
「それでいいのです。」イルドゥン
「何を言う、ラスタバン。」ラスタバン
「このファシナトゥールは時の止まった、よどんだ世界だ。誰かが、その時を刻まねばならん。
私は貴方に期待しているのです、アセルス様。」イルドゥン
「こんな小娘にそんな力があるものか!お前の見込み違いだ。」アセルス
「訳の分かんない役割を
勝手に押し付けないでよ」ラスタバン
「いずれ分かります。アセルス様の目覚めを快く思わぬ者も多い。イルドゥン、頼むぞ。」白薔薇
「相変わらず情熱家ですのねラスタバンは。」イルドゥン
「ラスタバンめ、気でも触れたか。」白薔薇
「あれがラスタバンです。」アセルス
「眉間にシワが寄ってないね」白薔薇
「え?」アセルス
「この城の男どもは、みんな眉間にシワが寄ってるよ。何が不満なんだか、いつでも不機嫌そうだ。」白薔薇
「フフ、そうですね。確かに、ラスタバンは少し違います。もう一人、いらっしゃいますけど‥‥」イルドゥン
「わざわざ足を使って去っていくとは本当にお前に気を遣っている証拠だな。」
アセルス
「ねえ。」ジーナ
「は、はい。」
心臓の鼓動が一気に高まり、私はそれ以上、何も言えませんでした。
アセルス
「おかしな人だな。」
おかしな人と言われて、私の頭の中は真っ白になってしまいました。
アセルス
「おかしな人なんて言って、ゴメン。私はアセルス、あなたは?」ジーナ
「‥‥ジーナです。」アセルス
「ねえ、ジーナ、ここはどういう所なの?」ジーナ
「私にもよく分かりません。3年前にここに奉公に来てから、分からないことばかりです。」
私とアセルス様は、しばらく話をしました。
夢のようで、何をお話したのかは思い出せません。
主人
「ジーナをお城へ御連れになるのは勘弁して下さいませ。」アセルス
「何の話?」主人
「あれは不器用、不細工で何の御役にも立ちません。どうか、御連れになるのだけは勘弁して下さいませ。」アセルス
「私は妖魔じゃないよ。人間だよ。」主人
「御怒りのこととは思いますが、どうか、どうか、あの娘だけは。」
セアト
「おい! 一ついい情報を教えてやろう。」セアト
「無視か、ずいぶんな態度だな。ファシナトゥールから出る方法を知りたくないとはな‥‥」アセルス
「教えて!」セアト
「根の街の酒場へ行ってみろ。普段見かけない奴が来ている。」アセルス
「なぜ、そんなことを教えてくれるの!」
飛ばし屋
「よう! 陰気な酒場だな、ここは。音楽とか踊りとか、何か無いのかい。」アセルス
「ここは初めて?」飛ばし屋
「い、いや、酒場なんか、あんまり来ないからな‥」アセルス
「どこから来たの?」飛ばし屋
「どこって、ここの者だよ。」アセルス
「ウソつかないで。ここから連れ出して欲しいんだ。」飛ばし屋
「そういう話かい。金はあるか?」アセルス
「今は無い。必ず準備しておくから。」飛ばし屋
「‥‥まあ、いいだろう。この下の家の鍵だ。奥に秘密の通路がある。後で来い。金を忘れるなよ。」
アセルス
「ジーナはお給金はどうしてるの。」ジーナ
「全部、親方に預かってもらっています。」
アセルス
「イルドゥン、あの‥‥おか」イルドゥン
「なんだ? もっとはっきりモノを言え!」アセルス
「いや、何でもないんだ。」白薔薇
「では、参りましょう。」アセルス
「白薔薇姫、白薔薇
「白薔薇で構いませんわ。」アセルス
「白薔薇、お金を貸して欲しいんだ」白薔薇
「お金ですか? 困りましたわ。私にも‥‥ イルドゥンならば何とかしてくれるでしょう。」アセルス
「ダメだ!! 正直に話すよ。ここから逃げ出すのにお金が要るんだ。」白薔薇
「そうですか、わかりました。今の人間がどんなお金を使っているのか分かりませんが、貴金属の持ち合わせならば少しあります。それで、なんとかなるでしょう。」アセルス
「ありがとう、白薔薇!」白薔薇
「私もお供させていただきますよ。オルロワージュ様からアセルス様の教育を言い付かっておりますから」アセルス
「うん。ありがとう。」
スライム
「どうぞ‥‥」白薔薇
「この情報は誰から?」アセルス
「セアトだよ。」白薔薇
「なぜ、セアトが‥‥ 嫌な予感がします。」
アセルス
「いない! だまされたんだ!」白薔薇
「追っ手が来ますわ。私が防ぎます。」アセルス
「イヤだ!私も戦う。」イルドゥン
「おままごとはそれぐらいにしていただきましょう。さあ、手間をかけさせないでください。」白薔薇
「責任は私にあります。罰するなら私を、イルドゥン。」イルドゥン
「それは主上が御決めになることです。」アセルス
「あそこに戻るぐらいなら、ここから飛び降りてやる!」白薔薇
「アセルス様!」飛ばし屋
「遅くなった、さあ乗れ!」イルドゥン
「ちっ、下衆な機械なぞ持ち込みおって!」
アセルス
「白薔薇、どうしたの? シップは初めて?」白薔薇
「あの方が、オルロワージュ様が御怒りになる‥‥」アセルス
「大丈夫だよ、大丈夫‥‥」
アセルス様がファシナトゥールを去ったのを知ったのはしばらく経ってからでした。
その時の気持ちは‥‥ 上手く言い表せません。
ただ、もう二度とお目にかかることは出来ない そう感じました。一方、アセルス様の脱出は、針の城にも知れ渡りました‥‥
セアト
「アセルスと白薔薇様が逃げましてございます。」オルロワージュ
「ふむ。これで面白くなる。あの半人が、どういう体験をするか興味深いではないか。白薔薇まで一緒というのは気にくわぬが‥‥」セアト
「イルドゥンの処分は如何致しましょう?」オルロワージュ
「捨て置け」セアト
「しかし、それでは ふぐっ」オルロワージュ
「少しうるさいぞ、セアトよ。」セアト
「申し訳ございません‥‥ くっ」
飛ばし屋
「遅れて悪かったな。もう一回乗せてやるから、それで勘弁してくれ。燃料の補給と整備が終わるまでオウミの街にでも行っててくれ。」
アセルス
「花びらが‥‥」白薔薇
「花文字ですわ‥」アセルス
「読めるの?」白薔薇
「‥‥水妖が仲間を探しているんです。」アセルス
「水妖?」白薔薇
「水妖はその名のとおり、水と共に生きる下級妖魔です。恥ずかしがり屋で、めったに見かけることはありません。この湖のどこかに住んでいるのですね。」アセルス
「仲間が行方知れずか、かわいそうに。」
町の人
「あんたもう聞いたかい? 御領主様が水の精の手当てをなさってるんだよ。」町の人
「早く湖に帰したほうがいい。水神様が御怒りになる。」町の人
「水の精はもともと、発着場の辺りに住んでたんだ。俺たちゃ、水の精の住み家には近づかないようにしてたよ。それがよ、シップの発着場が出来たんで、水の精がこっちに移ってきたんだそいで、網に掛かっちまったっていうわけさ。」
領主
「何か御用ですか?」白薔薇
「このお屋敷に水妖がいるとうかがったのですが。」領主
「それが、何か?」白薔薇
「水妖の仲間が、その子を探しています。」アセルス
「帰してあげないと。」領主
「出てってくれ! いや、待て、待ってくれ。君たち、何を知っている?さっきの話、本当か?」白薔薇
「ええ。」領主
「私はどうしたらいいんだ。早く湖に戻したほうがいいのは分かっているんだ。でも、私は‥‥私は‥‥」白薔薇
「落ち着いて。」アセルス
「とにかく、水妖に会わせて下さい。話がしたいのです。」領主
「‥‥わかりました。こちらへどうぞ。」
領主
「ここです、この部屋です。しかし、話は出来ないでしょう。彼女は一度も口を聞いてはくれないのですから。」白薔薇
「あなたは、遠慮してください。」領主
「しかし‥‥わかりました。」
領主
「どこへ行くんですか!話は出来ましたか?」アセルス
「いや、まだ‥‥」領主
「ふざけないで下さい!」
メサルティム
「高貴な妖魔の匂いがする‥‥人間なのになぜ?
気に障ることを言ってしまいましたか?」アセルス
「いいや、君は本当のことを言っただけさ。私は半分人間、半分妖魔というこの世でたった一人の中途半端な存在。」メサルティム
「御名前を御教えください、高貴な方。」アセルス
「アセルス。」メサルティム
「アセルス様‥‥ 気高い響き‥‥」白薔薇
「アセルス様は、オルロワージュ様の血を頂いたのよ。」メサルティム
「!!妖魔の君オルロワージュ様!! 御許しください、御無礼を御許しください。」アセルス
「なぜそんなに怯えるの?」メサルティム
「妖魔の君の怒りに触れましたら、下賎な身の私など消滅してしまいます。」アセルス
「大丈夫だよ、わたしはあの人じゃないから。君のことを教えてよ、そのために来たんだ。」メサルティム
「私はメサルティム、この湖にすんでいます。漁師の網に掛かり、捕らわれてしまいました。」白薔薇
「ケガしているのを治療してくれたのではないですか?」メサルティム
「大事にしてくれているのは分かるんです。けれど、人間の臭いは嫌いです、息が詰まる‥‥帰りたい‥‥」アセルス
「行こう! 居たくも無い所に居る必要はない。」白薔薇
「あの領主は、この水妖をあ ‥‥い‥‥」アセルス
「望んでもいない物を押し付けて縛り付ける。そんな権利は無い。」白薔薇
「でも、あの人間、外に出してはくれません。」アセルス
「方法はあるよ、きっと。」
領主
「どこへ行くんですか!」アセルス
「気晴らしに歩き回ってもいいでしょう。」領主
「‥‥ええ、彼女がそうしたいのならいいでしょう。ただし、外には出ないでください。」
領主
「地下室は危険です!地下室には近寄らないように。」
白薔薇
「外側から鍵が掛かってる。」アセルス
「この先へ行ってみよう。」
メサルティム
「ああ、湖の匂いがする! さようならアセルス様、ありがとうございます。」アセルス
「さよなら、メサルティム。どうしたの、白薔薇?」白薔薇
「あの若者の気持ちを考えると、素直に喜べないのです。」アセルス
「人間と妖魔が幸せになれるわけない!」
アセルス様と白薔薇姫様の関係は日に日に強くなっていました。
すべてが終わった後、アセルス様は、この頃の事を懐かしそうにお話になっていました。
そのご様子に私は軽い嫉妬を覚えたものですしかし、その事が白薔薇姫の主であるオルロワージュ様の逆鱗に触れたのです。
オルロワージュ
「セアト。」セアト
「は、御前に。」オルロワージュ
「白薔薇を連れ戻して来い。手段は任す。」セアト
「は。」セアト
「白薔薇姫を捕えよ。傷つけても構わん。邪魔するものは殺せ。」
アセルス
「シュライクへ行って。おばさんの家があるの。」
アセルス
「おばさん!!」おばさん
「あなた‥‥誰?」アセルス
「アセルスだよ。髪の色が違うから分からなかったんだね。」おばさん
「‥‥」アセルス
「どうしたの?」おばさん
「幽霊なの? いなくなった時の年格好のままで‥‥やっぱりアセルスは死んだんだね。」アセルス
「何を言ってるの? 死んでなんかないよ。本人だよ。」おばさん
「私をたぶらかす妖怪かい?12年も前のアセルスの姿で現れるなんて、誰か!助けて!!」アセルス
「12年‥‥
私がオルロワージュの馬車に轢かれファシナトゥールに連れ去られて12年‥‥
どうして教えてくれなかったの、白薔薇‥‥」白薔薇
「ファシナトゥールにいる限り、時の流れは意味を持ちません。
それに、アセルス様にショックを与えたくなかったのです。アセルス
「やっぱり、私は化け物なんだ。12年も年を取らないなんて‥‥」白薔薇
「そんな物の言い方をしてはいけません。」アセルス
「ほっといてよ!!」
白薔薇姫様、針の城に御戻り下さい。オルロワージュ様に逆らうおつもりですか?
白薔薇
「そんな、オルロワージュ様に逆らうだなんて、誤解です。」
言い訳は、御帰りになってからにしていただきましょう。
「ダメだ、白薔薇!白薔薇に触れるな!」
邪魔する者は殺して良いと言われております。
白薔薇
「ああ、あのお方に逆らうなんて‥‥」アセルス
「白薔薇、どこにも行かないで。私のことを本当に分かってくれるのはあなたしかいないんだから。」白薔薇
「アセルス様‥‥」
零
「嫌な臭いのする娘じゃな。」アセルス
「いきなり何よ。変な子ね。」白薔薇
「あの、御名前を教えていただけませんか?」零
「名乗るほどの者ではない。」
アセルス
「どうしたの?」中島社長
「娘のことを思いだしてね‥‥」
T260
「生態エネルギー以上数値!!」アセルス
「機械にまでわかるのか、私が人間じゃないって。」
クーン
「どうしたの? どっか痛いの?」アセルス
「ううん、そうじゃないわ。心配してくれてありがとう。」クーン
「ボク、クーン。」アセルス
「私はアセルスよ。クーンは私のこと、恐くない?」クーン
「うん、ぜ〜んぜん。」アセルス
「私に吸われちゃうかも知れないんだよ?」クーン
「吸われるのはヤだな。でも、アセルスはそんなことしないよね?」
メイレン
「緑の髪、キレイね。 あら、気に障った?ごめんなさい。」アセルス
「いいんです。」メイレン
「何かわけありみたいね。いいのよ、何も話さなくて。」
サンプル管理者の心得
モンスター、妖魔、人間を常に補充する事。
半妖は極めて貴重なサンプルである。捕獲
成功時は、生かし続けることが最優先。
逃がしませんよ!!
終わりだ!!
第3の追っ手を破ったアセルス様でしたが、
次の追っ手は今までの敵とは比べ物にならない程の強敵だったのです。
オルロワージュ
「金獅子だな。」金獅子
「はい、オルロワージュ様。なぜか血が騒いで、目が覚めました。あなた様の血を分けた娘アセルス、それに付き従う白薔薇姫‥‥セアトでは役不足でしょう。」オルロワージュ
「そなたが行くのか?」金獅子
「あなた様のために戦う事が私の務めです。それに、白薔薇‥‥ 妹姫にも会ってみたいもの。何ゆえ、あなた様に逆らうのか?」オルロワージュ
「そなたを止めることは出来ん。 行くがよい。」
金獅子
「アセルス殿!」アセルス
「誰だ!」白薔薇
「金獅子姫様ですね。私、白薔薇と申します。姉姫さまの御噂は耳にしておりました。最も勇敢な寵姫であったと。」金獅子
「白薔薇姫‥‥ あなたは最も優しい姫であったと評判ですよ。その優しさで、私の剣が止められますかしら。」アセルス
「戦うのは私だ!」金獅子
「ふっ、どちらでも。この剣に屈しなかったのはオルロワージュ様ただ一人。参る!!」
金獅子
「白薔薇姫、あなたの気持ちはよく分かりました。私もかつて、その気持ちを胸に抱いていた日々がありました」白薔薇
「金獅子姉さま‥‥」金獅子
「アセルス殿、妹姫を頼みますよ。」白薔薇
「御待ち下さい。それでは、金獅子姉さまが罰を受けます。」金獅子
「構いません。あの方に罰していただけるのならば喜んで罰を受けます。さらば!」アセルス
「金獅子姫‥‥気持ちの良い人だったね。」白薔薇
「ええ。アセルス様、ありがとうございます。」アセルス
「え、何が? 白薔薇、どういうこと?」
こうして、金獅子姫様は去りました。
次は、思わぬ人物がアセルス様のもとを訪れたのでした。
メサルティム
「アセルス様!」アセルス
「メサルティム、力を貸してくれないか?」メサルティム
「何なりとお命じ下さい。私はあなた様の僕でございます。」アセルス
「しもべだなんて、そんなことないよ。」
イルドゥン
「まだまだ技が未熟だな。」アセルス
「イルドゥン。今度はあなたか!」イルドゥン
「俺は追っ手ではない。ラスタバンに言われて、嫌々来てやったのだ。次はセアトが自分で来る。お前を護れと言われたのだ。」アセルス
「誰も頼んじゃいないよ。」イルドゥン
「ラスタバンがセアトにやられた。」白薔薇
「ラスタバンが!彼は消滅したのですか?」イルドゥン
「いえ、幸い消滅はしておりません。だが、セアトはラスタバンの力を吸収し、今までよりも強くなった。傷ついたラスタバンの頼みでなければ、誰がお前なぞを護り来るものか。」
セアト
「俺はラスタバンの力を吸って強くなった。オルロワージュ様の血を受けた貴様の力を吸収すれば、あるいはあの方にも‥‥ 行くぞ!」
アセルス
「消えた‥‥」イルドゥン
「お前の方がセアトよりも格が上の証拠だ。お前の意志が、奴を消滅させた。これが上級妖魔の死だ。」アセルス
「それで、みんながあの人を、オルロワージュを恐れるのか?消滅させられるから?」白薔薇
「妖魔の時は長い。だからこそ永遠の死を恐れるのです。」アセルス
「私にも、その力があると‥‥」
アセルス
「なんだ、何が起こったんだ!」白薔薇
「とうとう、あの方が自ら御出ましになられたのですわ。」
余に逆らう不届き者たちよ、この迷宮で永遠にさまよい続けよ!
白薔薇
「ここはオルロワージュ様が産み出した闇の迷宮。何かを犠牲にしなければ出ることは出来ないと言われています。」
赤カブ
「おやおや、こんな所にやってくるとは。」アセルス
「何してるの?」赤カブ
「こんな所だ。何もすることはない。」アセルス
「‥‥」赤カブ
「怒るな。ここの扉のどれかが出口だぞ。」アセルス
「それがわかってて、なぜ出ないの?」赤カブ
「一人では出られないからだ。出てみれば分かる。」
アセルス
「やっと出られた。白薔薇‥‥どこだ?」
アセルス様、私は迷宮に残ります。
アセルス
「何を言ってるの?」
これが、あの方に逆らった私の償いです。さようなら、アセルス様。
アセルス
「待って、白薔薇‥‥ 白薔薇あああーーー」
アセルス様、自由に生きて下さいあなたは自由です
アセルス
「あああ‥‥」イルドゥン
「おい、いい加減にしろ。行くぞ。」アセルス
「‥‥白薔薇‥‥」イルドゥン
「チッ、ふ抜けが!」
アセルス
「君は行かないのかい?」赤カブ
「白薔薇姫さんが迷宮に残ったから私が外に出られた。姫さんと私の立場が入れ替わった。だから、お前さんの側にいるよ。」アセルス
「君が白薔薇の代わり? フッ、フハハハ」赤カブ
「ワハハハハハ」
ゾズマ
「すっかり打ちひしがれて、かなり打たれ弱いタイプだね。白薔薇もどうかしてるよ、こんなのを好きになるなんて。」アセルス
「白薔薇が‥‥」ゾズマ
「オルロワージュ様が、わざわざ自分で出向いてまで白薔薇姫を取り返そうとしたのも姫が自分から君の許を去ったのも、それが理由だろう。」アセルス
「それは‥‥」ゾズマ
「君が打ちひしがれていたのも、君が姫のことを好きだったからだろう。」アセルス
「‥‥友達だったし、お姉さんだったからだよ。そう。」ゾズマ
「じゃあ、口に出して言ってみな。好きだって。」アセルス
「そんなの間違ってる。だいたい私はこれでも女よ。半分妖魔になっても、変わってないわ。」ゾズマ
「ふん、くだらないことに縛られているんだな。姫も言ったじゃないか、自由になれってね。」アセルス
「あれは、オルロワージュから自由になれって言う‥‥」ゾズマ
「もうどうでもいいよ。君と話していても楽しくない。行こう。」アセルス
「どこへ?」ゾズマ
「どこでもいいんだよ。じっとしていても仕方がないだろう?」
イルドゥン
「少しはしゃきっとしろ!見ていて歯がゆいぞ!」アセルス
「イルドゥン!」イルドゥン
「これからどうするか、お前が自分で決めろ。もう少しつきあってやる。」
零
「白薔薇は去ったか。あれも、オルロワージュなどに忠義立てせずとも良かろうに。」アセルス
「あなた誰?どうして白薔薇やあの人のことを知ってるの?!もしかして、そんな‥‥ あなたが零姫‥‥様」零
「わらわのことも一応は知っておったか。お前がこのような運命に巻き込まれたのには、わらわにも少しばかり責任があるお前がどのような形で決着をつけるのかはお前の問題だがわらわも手を貸そう。」結構ですを選択
零
「そうか、それもよかろう。この場所もあれに知れたであろう。さらばじゃ。」
飛ばし屋
「お、また会ったな。あの薔薇の人はどうした?俺、ファンだったのに。」飛ばし屋
「もう二度と行くまいと決めてたんだが‥‥ わかった。俺も飛ばし屋だ。やってやるぜ!」
主人
「なぜジーナを、なぜ連れて行った!! どこという取り柄も無い、普通の娘だ。なぜ、そんな娘まで毒牙に掛ける!もう、こんな所にはいたくない!」アセルス
「ジーナが連れて行かれた!オルロワージュめ!!」
アセルス
「私はアセルス! 道を開けよ!!」
アセルス
「棺が開いている‥‥」ゾズマ
「獅子姫はあの方を護ろうとするだろうね。そんな健気な獅子姫を君は打ち倒す覚悟があるのかい?」イルドゥン
「金獅子姫様とは一度手合わせをしたそうだな。そのときは、おそらく手加減をしていたのだ。今度は違うぞ。」
零
「いつまでもこの棺を取っておく辺りがオルロワージュの弱さ。並の男と変わらぬ。」
アセルス
「‥‥白薔薇‥‥
まだ闇の迷宮にいるんだね‥‥」
アセルス
「ジーナ!! 君だったのか。大丈夫かい?」ジーナ
「アセルス様?本当にアセルス様だ!!」
この時、私は奇跡というものの存在を実感しました。
ジーナ
「はい、私は大丈夫です。」仕立て屋でさらわれた話を聞いていた場合
ジーナ
「怪物の姿の中に閉じ込められていましたありがとうございます、アセルス様。」アセルス
「オルロワージュにひどい事されたね。」ジーナ
「私をここに連れてきたのも、私を怪物の中に封じ込めたのも、御城主様ではありません。あれは、確か、ラスタバン様。」アセルス
「どうしてラスタバンが‥‥ イルドゥン、説明してくれ。」イルドゥン
「セアトとの一件以来、あいつの行動は理解出来ん。」ジーナ
「私はここで待ちます。」イルドゥン
「セアトを挑発したり、娘をさらったり、まるでラスタバンらしくない。セアトにやられたのも、あるいは‥‥」
‥‥吸わせろ‥‥
‥‥貴様を吸えば‥‥
‥‥復活‥‥
ゾズマ
「全く見苦しい妖魔だったね。」人間寄りの場合
アセルス
「そういう言い方はやめろよ。あいつはあいつなりに必死だった。それが分かる。」
アセルス
「獅子姫、どうしてあなたと戦わなければならないのか分からない。私の目指すところは一つ。あなたではないわ。」金獅子
「互いに言葉を交わす時は過ぎました今は戦いで決着をつけるときです。今度は全力であなたを倒す!!」アセルス
「獅子姫‥‥」
ラスタバン
「御帰りを御待ちしておりました、アセルス様。いまこそオルロワージュ様を倒し、この城の主となるときです。」人間寄り
アセルス
「ラスタバン、あなたの企みは知っている。あの人を倒す道具として私を使うつもりだね。私は私の意志であの人と戦う。あなたの野望とは無縁よ。」ラスタバン
「そうですか。オルロワージュ様を排除し、あなたと共に妖魔の王国を築こうという私の意図は理解していただけませんか。ならば、あなたの力を奪い、私一人の王国を築くのみ!!」
イルドゥン
「なぜだ、ラスタバン‥‥ 何がお前を狂わせたのだ‥」アセルス
「イルドゥン‥‥」イルドゥン
「こうなれば、貴様の行く道を最期まで共に進むしかあるまい。」
半妖寄り
アセルス
「私がこの城の主?そんな気は無い。でも、あの人との関係は清算するつもり。」ラスタバン
「ならば私からのはなむけとして、冥帝の鎧を。」
妖魔寄り
アセルス
「私にその力があるかな?」ラスタバン
「自信を御持ち下さい。妖魔の誓いにより、私が直接、手を貸すことは出来ません。そのかわり、この冥帝の鎧を御持ち下さい。」
イルドゥン
「この先はオルロワージュ様の領域、よく考えろ。」
オルロワージュ
「我にひれ伏すために舞い戻ったか、娘よ。」
人間エンド
アセルス
「私の中の妖魔の血。これを浄化するにはあなたを倒すしかない。」オルロワージュ
「やはり人間は人間か。つまらぬな。」アセルス
「あなたにとっては人間も妖魔もつまらない存在でしょう。でも、みんな生きてる。赤くても青くても血が流れている」オルロワージュ
「ありふれた物言いだな。もう飽いたぞ。」
ジーナ
「私の方が長生きするなんて思いませんでしたよ。」ゾズマ
「永遠の命を捨てた娘よ」イルドゥン
「一瞬の炎のごとき者」零
「散りゆく花の美しさ」メ
「高貴なる魂の君」白薔薇
「ジーナ、あの方は幸せでしたか?」ジーナ
「ええ、もちろん。あの日から今日まで、アセルス様は輝いておられました!」
妖魔エンド
アセルス
「悟ったわ。私はもう人間としては生きられないならば、妖魔として生きるだけ。そのために、あなたと決着をつける。」オルロワージュ
「私に取って代わるというのか?私に挑む者が現れようとは!お前に血を与えた甲斐があったというものだ。来るが良い、娘よ。手加減は無しだぞ。」
ジーナ
「アセルス様!今日はお出にならないかと……」アセルス
「何を言うんだジーナ。君は私にとって特別な人だ。私の最初の姫だからな。」ジーナ
「アセルス様‥‥」ラスタバン
「アセルス様! それではオルロワージュ様と変わりありません。あなた様は、」アセルス
「うるさいぞ、ラスタバン。私はあの人を越えた。そう、すべての面であの人を越えるのだ。姫も100人でも200人でも集めてやる。それから、他の妖魔の君を屈服させる。人間も機械も私の足元にひれ伏させるのだ。」イルドゥン
「だからいったろう、こんな奴に期待するなと」アセルス
「イルドゥン、もうお前の指導なぞいらん。立ち去れ。」イルドゥン
「ふん、 ファシナトゥールも終わりだな。」アセルス
「お前はどうするんだ、ラスタバン。」ラスタバン
「私はアセルス様について行きますそれが、私の願いでありました。」アセルス
「よし、ではゾズマを捕えてこい。あいつ、自分であの人を倒した気でいる。だれが妖魔の君か、じっくり教えてやらねば。」ラスタバン
「棺の姫たちは、いかが致しましょう?」アセルス
「棺など永遠に閉じておけ。あの人の食いカスなど興味無い。」ジーナ
「アセルス様‥‥
‥‥こわい‥‥」アセルス
「大丈夫だよ、ジーナ。二人で永遠の宴を楽しもう。私にはその力がある。」
半妖エンド
アセルス
「私は私。妖魔の血が混ざってもそれは変わらない。妖魔からは半人と馬鹿にされ、人間からは半妖とさげすまれても、私は自分が好き。それでいいんだって分かったわ。苦しんだり、悩んだりすることも私の一部。だから、これからもこの運命と共に生きていくわ。それだけ言いたかったの。それじゃ、二度と会うこともないけど。」オルロワージュ
「待てい。我が血を得た者の言うことがそれか?すべてを支配する力を備えているのだ。もっと欲望のままに生きよ。己の苦悩を周りの世界にまき散らせお前に関わるものを不幸にしろ。」アセルス
「私はあなたのコピーじゃない。やりたきゃご自分でどうぞ。」オルロワージュ
「やはり、人間などに血を与えても無意味であったか。我が過ちを消去しよう。」
ジーナ
「‥‥こうしてアセルス様は新たな旅に出ることになりました。」「おばあちゃん、もっと聞きたい。」
「そんなにおねだりしちゃ、おばあちゃんが大変だろう。さあ、あっちで遊びなさい。」
「は〜い。」
ジーナ
「お前も子供たちの所へお行き。」「ああ。母さんの永遠の恋人が来るんだね。」
ジーナ
「赤くなるようなこと、言わないでおくれ。」
ジーナ
「イルドゥン様!」イルドゥン
「驚かせてしまったかな、ジーナ。」ジーナ
「いいえ。イルドゥン様も最近はすっかりお優しくなられましたし」イルドゥン
「君のおかげだよ、ジーナ。君の生きる姿を見続けることで、自分はこんなにも変わることが出来た。あのころは、自分からすべてのことに目も耳も閉ざしていたのだよ。」ゾズマ
「らしくないな、イルドゥン。黒き翼、宵闇の覇者のせりふか?」イルドゥン
「茶化すな、ゾズマ。」ジーナ
「ゾズマ様も、御機嫌麗しゅう。」ゾズマ
「ジーナも元気だね。」白薔薇
「ジーナ。」ジーナ
「白薔薇姫様!!御目覚めになられたのですか?」白薔薇
「ええ。闇の迷宮に捕らわれていた後遺症もすっかり良くなりました。あなたもずいぶんと心配して下さったと、うかがったわ。アセルス様から。」ジーナ
「アセルス様は‥‥」イルドゥン
「アセルスめ、何をしている。本当に来ないつもりか?」ゾズマ
「こういう時にはっきりしない性格は変わらないね。」白薔薇
「大丈夫よ、ジーナ。アセルス様は必ずいらっしゃるわ。」ジーナ
「はい、白薔薇姫様。」
ジーナ
「アセルス様、よくお出で下さいました」アセルス
「ジーナ、最近来るのが辛いんだ。君の姿を見ると‥‥」ジーナ
「何をおっしゃいます。私は年に一度のご訪問を心待ちに致しております。いつまでも若々しいアセルス様は、私の青春の日々の証です。ぜひ、私の最期の日まで、見届けて下さい。」アセルス
「何を言うんだ。縁起でもない。まだまだ元気じゃないか。」ジーナ
「おかげさまで、今度、ひ孫が産まれますの。」アセルス
「素晴しいね。私もジーナみたいなおばあちゃんになれたかもしれないのに‥‥」ジーナ
「本当はそれが辛いのですね アセルス様。」アセルス
「大丈夫だよ。イルドゥンもいるし、白薔薇も目覚めた。ゾズマは相変わらずだけど。」ジーナ
「アセルス様は良いお仲間に恵まれておりますよ。皆様方もいつまでもあの日のように輝いて下さいまし。」
The End
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